セサミンの抗酸化作用

ゴマ由来の栄養素・セサミンにはがん予防、シミ予防・改善、脂質異常症の予防・改善など数多くの効能があります。これらの効能の大半は、セサミンの持つ抗酸化作用によるものなのですが、その実態はどのようなものなのでしょうか?セサミンの抗酸化作用についてご紹介します。

抗酸化作用とは

人を始めとする生き物に必要不可欠な酸素は、時折、体内で有害物質である「活性酸素」という物質に変わり、周囲にある脂質を酸化して「過酸化脂質」にします。この「活性酸素」や「過酸化脂質」は周囲の細胞や組織を破壊し、シミやしわ、ガンなどの原因となります。人体の老化現象は「活性酸素」が主な原因だと言う学者もいるほどなのです。

この活性酸素や過酸化脂質と反応することで、細胞や組織の破壊を防ぐ働きのことを「抗酸化作用」と言います。この抗酸化作用を持つ物質のことを「抗酸化物質」と呼び、代表的なものとしては、ビタミンCやビタミンEなどがあります。

実は「活性酸素」は1種類の有害物質ではなく、4種類(スーパーオキシドアニオンラジカル、ヒドロキシルラジカル、過酸化水素、一重項酸素)の有害物質の総称です。また、活性酸素と同じように細胞や組織を破壊する「過酸化脂質」も広い意味で「活性酸素」に加えられることが多いです。そのため、「抗酸化物質」と一口に言っても、それぞれ除去する活性酸素の種類が違います。例えば、ビタミンCはスーパーオキシドアニオンラジカル、過酸化水素、一重項酸素を除去し、ビタミンEは過酸化水素、一重項酸素の除去を行います。

セサミンの抗酸化作用はどんなもの?

セサミンの抗酸化作用は、過酸化脂質が細胞や組織を破壊したり、周囲の脂質を酸化して新たな過酸化脂質を生み出したりするのを防ぐタイプのものです。セサミンの抗酸化作用は、身体の器官・部位別に次のようなものがあります。

(1) 肝臓における抗酸化作用
食べた食物を分解し、体に必要な物質に合成する器官である肝臓は、体内で発生する活性酸素の約8割が発生する器官です。肝臓で発生した活性酸素は、肝細胞を傷つけ、肝臓の機能を低下させてしまいます。肝臓の機能が低下したことによって、脂肪やアルコールの代謝が適切に行われず、分解されなかった脂肪が肝臓内に蓄積し、脂肪肝となってしまうこともあります。

セサミンは肝臓の門脈で吸収された後に、大半が肝臓の活性酸素(正確には過酸化脂質)の除去に働きます。肝臓の活性酸素が除去されることによって、脂肪の代謝能力が回復し、脂肪やアルコールを正常に分解できるようになります。また、新陳代謝と共に、脂肪肝も回復します。

また、大量の活性酸素によって破壊された肝細胞がガン細胞化し、肝臓ガンとなってしまうこともしばしばありますが、セサミンは活性酸素を除去することによって、細胞や組織の破壊を防ぐため、ガン、特に肝臓ガンの予防に効果があります。

(2) 皮膚における抗酸化作用
日光を浴びると、メラニン産生細胞(メラノサイト)から黒色のメラニン色素が分泌され、肌を紫外線のダメージから守ります。しかし、紫外線を浴びた際に発生した活性酸素によってメラニン産生細胞がダメージを受け、メラニン色素が過剰に分泌されてしまうことがあります。また、肌の新陳代謝の周期は、紫外線や活性酸素によって狂ってしまうこともしばしばあります。こういった要因で、メラニン色素が皮膚に残って沈着したものが「シミ」なのです。

肝臓で吸収されたセサミンは、その後血液を通して全身に運ばれます。皮膚に運ばれたセサミンは、そこで抗酸化作用を発揮し、活性酸素を除去するため、新たなシミの発生を予防することができます。また、活性酸素が除去されることにより皮膚の新陳代謝が正常化するので、すでに発生したシミも次第に改善されます。

(3) 血管における抗酸化作用
肝臓で分解された脂質は、LDLコレステロールという形で、血管を通して全身の末端組織に運ばれます。その過程で活性酸素によってLDLコレステロールは酸化され、酸化LDLとなり、血管内皮に溜め込まれます。通常、この酸化LDLはマクロファージによって除去されるのですが、マクロファージが処理できない量の酸化LDLが存在する場合、酸化LDLとマクロファージが合体した泡沫化細胞となって、血管内皮に沈着してしまいます。こうして(アテローム性)動脈硬化が起こります。動脈硬化は脳梗塞や心筋梗塞の原因となってしまいます。

摂取したセサミンは、血液によって全身に運ばれますが、途中で血液や血管で生じた活性酸素と結び付いて、これを除去していきます。そのため、LDLコレステロールの酸化が抑制され、動脈硬化を予防することができます。

ちなみに、抗酸化作用ではないのですが、セサミンには、血液中のLDLコレステロール値や中性脂肪値を下げる働きがありますので、これによっても動脈硬化や肥満を防ぐことができます。

(4) 神経における抗酸化作用
循環器や呼吸器、消化器といった人体の諸器官の活動を調整するために、24時間働いているのが自律神経です。自律神経には、日中や活動時に活発になる交感神経と、夜間や安静時に活発になる副交感神経の2種類があり、時間帯や必要に応じてどちらが活発になるかが切り替わります。強いストレスを感じた際に発生する活性酸素が、自律神経にダメージを与えて、自律神経が不調となることが、うつ病の主要な原因であるとされています。

自律神経に運ばれたセサミンが、周囲で発生した活性酸素を取り除くことで、自律神経のダメージを防ぎ、うつ病を予防することができます。また、すでにダメージを受けた箇所も、セサミンの抗酸化作用で新たなダメージを防ぐ限り、新陳代謝とともに新たな細胞に置き換わるので、うつ病の改善を期待できます。

セサミンの抗酸化作用を高めるには

セサミンの抗酸化作用を高めるには、次の点に注意するようにしましょう。

(1) 毎日欠かさずに摂取する
セサミンは、1回摂取すると、その抗酸化作用で症状を劇的に改善するというものではありません。セサミンは、あくまで栄養素であって医薬品ではないのです。毎日継続的に摂取することで、活性酸素を地道に減らし続けなければ、先述のようなガン予防、シミ改善などの効果は現れません。1日あたりの摂取目安量である10mgを毎日欠かさずに摂る習慣を作りましょう。

(2) 活性酸素を増やす生活習慣を改める
毎日普通に暮らしているだけでも多量の活性酸素が発生しますが、日常生活の中には活性酸素をより多く発生させるものがありますから、それらを避ける必要があります。まず第一に挙げられるのが紫外線です。外出時には帽子やUVカットクリームを使用することで、皮膚で活性酸素が発生しないようにしましょう。

タバコやアルコール、ストレス、過度の食品添加物、激しい運動なども活性酸素を増やしてしまいます。せっかくセサミンを摂ったところで、活性酸素の多い生活習慣を続けていると、抗酸化作用の意味が無くなってしまいますので気をつけましょう。

(3) 高脂質・高カロリーの食事を避ける
上でも見たようにセサミンが抗酸化作用を発揮する対象は、「過酸化脂質」です。高脂質・高カロリーの食生活をしていると、体内に余分な脂質が溜まってしまい、過酸化脂質が発生しやすくなります。いくらセサミンを摂取しても、過酸化脂質が多すぎては効果が出てきません。脂質・カロリーに気をつけることで、過酸化脂質の発生を抑えるようにしましょう。ゴマは同重量の肉類よりも、高脂質・高カロリーの食材ですので、ゴマからセサミンを摂ろうという方は、食事全体のカロリーバランスに気を付けてください。

まとめ

生きる上で必要不可欠な酸素が体内で変化して、有害になったものが活性酸素です。活性酸素は周囲の細胞や組織を傷つけ、ガン細胞化したり、機能を失わせたりします。この活性酸素と反応することで、細胞や組織の破壊を防ぐ働きを抗酸化作用と言い、抗酸化作用を持つ物質のことを抗酸化物質と呼びます。活性酸素は複数種類あるので、抗酸化物質もそれぞれ対応している活性酸素は異なります。

ゴマの栄養素セサミンも抗酸化物質の一種で、活性酸素の中でも、脂質が酸化された過酸化脂質の生成を防ぐタイプの抗酸化作用を示します。セサミンの抗酸化作用は皮膚、血管、神経など全身の活性酸素を除去してくれるものですが、特に肝臓でその効果を発揮します。セサミンを継続して摂取することで、活性酸素が原因となって起こるガンや脂肪肝、シミ・しわ、動脈硬化、うつ病などを予防したり、改善したりすることができます。

セサミンの抗酸化作用を十分に発揮するためには、(1)毎日欠かさず摂取する(2)紫外線・タバコなどの活性酸素を発生させるもの・習慣を避ける(2)高脂質・高カロリーの食事を避ける、といった点に気をつけるようにしましょう。

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