ゴマに含まれる油はどんな成分?

1.ゴマに含まれる油
1-1.オレイン酸
1-2.リノール酸
1-3.リノレン酸
1-4.パルミチン酸
1-5.ステアリン酸
2.ゴマに含まれる油の健康効果
3.ゴマに含まれる油とセサミン
4.まとめ

ゴマの栄養素セサミンには、肝機能の向上やうつ病予防など多くの効果があります。このセサミンはゴマ油にも含まれており、ゴマの脂質成分と深いかかわりがあるのですが、ゴマにはどのような種類の油が含まれているのでしょうか。ゴマに含まれる油の種類やセサミンとの関係について詳しく見ていきましょう。

ゴマに含まれる油

実はゴマの重さの約半分は油(脂質)が占めています(乾燥重量では約6割)。そのため意外ですが、ゴマは同じ重さの肉や魚よりも高いカロリーの食材なのです。

ゴマに含まれている油の約8割はオレイン酸とリノール酸が占めており、残りはリノレン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などです。

オレイン酸

オレイン酸はゴマの油脂中の39.8%を占める油脂で、オリーブオイルなど植物性の油に多く含まれています。後述するステアリン酸からオレイン酸が作られるのですが、ステアリン酸の融点は70℃であるため、ステアリン酸は人体中では固体でしか存在できず、人体が生きていくための脂質としては甚だ不適切です。しかし、酵素がステアリン酸をオレイン酸に変化させてくれるため、人体の脂質は液体状態となって、流動性を確保することができるのです。母乳に含まれる脂肪分の約1/3はオレイン酸が占めています。

リノール酸

リノール酸はゴマの油脂中の46.8%を占める油脂で、オレイン酸と共にゴマの油脂の中心的存在です。リノール酸は必須脂肪酸(人体に必要不可欠であるにもかかわらず、人体で作り出すことができない脂質)ですので、食事やサプリメントから摂る必要があります。

リノール酸が不足することによって、髪の毛がパサついたり、ぬけたりすることがある他、傷の治りも遅くなります。リノール酸を摂取することでこれらの問題を改善できるだけでなく、血液中のコレステロール値や中性脂肪値を一時的に低下させることもできます。しかし、過剰摂取した場合にはアレルギーの悪化や大腸がんのリスクがありますので注意が必要です。

脂質に関する国際的な機関であるISSFALは、リノール酸の推奨摂取量を、全カロリーの2%(4-5gに相当)としています。

リノレン酸

リノレン酸がゴマの油脂中に占める割合は1.2%と小さいですが、リノール酸と同じく必須脂肪酸ですので、人体には重要な脂質です。リノレン酸は、サプリメントで有名なDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)を人体で作り出す際の材料となります。

リノレン酸を摂取することで、うつ病や心血管疾患のリスクを軽減することができるという研究報告があり、1日あたりの推奨摂取量は約2gです。

パルミチン酸

パルミチン酸はゴマの油脂中の8.0%を占める油脂で、ラードや牛脂に多く含まれています。体内では酵素によってステアリン酸へと変換されます。

ステアリン酸

ステアリン酸はゴマの油脂中の4.3%を占める油脂で、ろうそくの原料として有名です。パルミチン酸から作られた後、酵素の働きでオレイン酸に変換されます。

ゴマに含まれる油の健康効果

ゴマに含まれる油のうち、栄養学的な効果が高いのは

  • ・オレイン酸
  • ・リノール酸
  • ・リノレン酸

の3種類です。

オレイン酸は肥満や心血管疾患の原因となるLDLコレステロール(悪玉コレステロール)を減少させ、代わりに肥満を予防・改善するHDLコレステロール(善玉コレステロール)を増やす働きがあります。また、動脈硬化や心血管疾患を予防する働き、腸の働きを活発にすることで便秘を解消する働きもあります。

リノール酸は先ほどご紹介したように、血液中のコレステロール値や中性脂肪値を低下させる働きがありますので、肥満や動脈硬化を予防・改善したいという方にお勧めです。

リノレン酸はうつ病や心血管疾患のリスクを下げるだけでなく、DHAやEPAの原料にもなる大切な脂質です。DHAは脳細胞を構成する物質の一つであり、摂取することによって学習機能の向上が報告されていますし、EPAは血液中の脂質を減らす働きにより、動脈硬化や脂質異常症の治療薬に使われています。サプリメントで人気があるこれらの栄養素も、リノレン酸をしっかり摂ることによって体内で作り出せるのです。

ゴマに含まれる油とセサミン

栄養素は水に溶けやすい「水溶性」のものと、油に溶けやすい「脂溶性」のものに分かれるのですが、セサミンは脂溶性の栄養素です。そのため、ゴマを搾って作られるゴマ油の中にもセサミンは含まれています。

オレイン酸・リノール酸が持つコレステロールを低下させる働きや、リノレン酸のうつ病を予防する働きなどは、セサミンにも共通する働きです。セサミンとこれらの油脂を共に摂ることで、共通する働きが相乗効果によってさらに高まることが期待できます。

セサミンと同様にオレイン酸やリノール酸、リノレン酸などのサプリメントも発売されています。サプリメントでなくとも、ゴマ油を普段の調理で積極的に使うようにすれば、これらの栄養素を一度に摂ることができますのでおすすめです。

まとめ

ゴマには多くの油脂が含まれており、オレイン酸とリノール酸がその8割を占めます。
オレイン酸はLDLコレステロールを減らしたり、動脈硬化・心血管疾患を予防したりする他、便秘も改善してくれます。

リノール酸は血中脂質を減少させ、肥満や動脈硬化を予防・改善してくれます。

オレイン酸やリノール酸に比べて少量しか含まれていませんが、リノレン酸はうつ病や心血管疾患のリスクを下げるだけでなく、DHAやEPAの材料でもある重要な油脂です。

セサミンは脂溶性の栄養素なので、これらの油脂と共にゴマ油にも含まれています。

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